適性検査の実態
ある調査によれば、採用にあたって適性検査を導入している企業は9割を超えるそうです。
データを素直に受け取れば、ほぼ全ての企業が何らかの適性検査を使って採用活動を行っていることになります。
しかし、このコラムを読んでいる方の中にも
「最近、転職活動をしたが適性検査は受けなかった」
「自社で採用を行う際も、適性検査は導入していない」
という方は多いのではないでしょうか。
かくいう私自身も数多くの企業の面接を受けていますが、適性検査が必須となっている会社はさほど多くはありません。
周囲に聞いても、新卒はともかく、中途採用ではほぼ全ての人が
中途採用面接では、適性検査を受験しなかった
と答えました。
大企業はまだしも中小企業では適性検査は採用時の必須条件ではないようです。
ではインターネットに出てくる
「適性検査を導入している企業は9割以上」
というデータは一体何なのでしょうか。
アンケートの集計結果は「作られた数字」
考えられることは、この数字は嘘ではないが事実でもない、作られた数字だということです。
筆者が若い頃に、ある禁煙本がブームになったことがありました。
その本は「読むだけでタバコがやめられる」というのが売りで、成功率は9割以上とのことでした。
ですがその数字は「本に挟んであるアンケート葉書による集計」が根拠だったのです。
つまり、本を読んだ人で、付属の葉書で「タバコをやめられました」と返送してきた人が全体の9割だった、ということです。
ここで考えていただきたいのは、では
- 本を読んだがタバコをやめられなかった人
- そもそも本を最後まで読まずに投げ出した人
が、わざわざ「タバコをやめられなかった」とアンケート葉書を返送してくるか? ということです。
そういう奇特な方もいらっしゃるでしょうが、多くの人はわざわざ葉書を返送せず、せいぜい周囲に
「あの本を読んだけど禁煙できなかったよ」
と言うだけではないでしょうか。
「適性検査の導入率9割」は数字のマジック
確かに表面的な数字では、アンケートの結果はほとんどが「本を読んだだけでタバコをやめられた」というものになるでしょう。
しかしそれはそもそもが、「好意的な母集団」によるものなのです。
「適性検査の導入率は9割」という数字についても同じことが言えます。
考えられるのは
- そもそもアンケートの対象企業が、一定規模の企業である
- アンケートに答えてくれる企業は、適性検査自体に好意的である
ということです。
前者については、例えば従業員が3名の企業に、アンケートの実施企業が適性検査の導入有無を尋ねるでしょうか?
仮にアンケートをしたとしても、その企業がそのアンケートに回答するメリットがなければ、メールや葉書などアンケート媒体を黙殺してしまうでしょう。
また、例えば新卒向けナビサイト、中途採用、適性検査などを一社で販売している大手企業はいくつかありますが、そういった企業が自社の取引先に
「適性検査を導入していますか?」
とアンケートをすれば、答えがイエスである確率は自然と高くなります。
こうなってくると「適性検査を導入していそうな企業にアンケートを行い、適性検査を導入していない企業はアンケートを黙殺する」可能性が上がります。
適性検査の導入率は9が割というのは数字のマジックだと言えます。
「どこもやっているから」ではなく、自社に合わせた適性検査の導入を考えましょう。